カードキーを紛失したことを管理会社に報告し、新しいカードの再発行を依頼した時、提示されたその費用に驚いた経験はありませんか。「たかがプラスチックのカード一枚に、なぜ一万円も、二万円もかかるんだ?」。その疑問はもっともです。数百円で合鍵が作れた時代の感覚からすると、カードキーの再発行費用は、法外に高く感じられるかもしれません。しかし、その値段には、単なるカードの材料費だけではない、高度なセキュリティシステムを維持するための、いくつかの正当な理由と、複雑な内訳が隠されているのです。まず、費用の中で大きな部分を占めるのが、「新しいカードキー本体の代金」です。このカードは、単なるプラスチックの板ではありません。内部には、固有のID情報が記録された、精密なICチップや、磁気ストライプが埋め込まれています。これらの電子部品と、偽造を防ぐための特殊な加工には、相応の製造コストがかかります。次に、非常に重要なのが、「システムへの登録・設定作業の技術料」です。新しいカードキーを発行するということは、単に新しいカードを渡せば終わり、というわけではありません。管理会社の担当者や、委託された専門業者が、建物のセキュリティシステムの中央管理装置にアクセスし、①紛失した古いカードのID情報をシステムから完全に削除(無効化)し、②新しく発行するカードのID情報を、あなたの部屋の鍵として、新たに登録する、という二つの重要な作業を行わなければなりません。この、専門的な知識と操作を必要とする作業に対する、人件費と技術料が、費用に含まれているのです。さらに、場合によっては、「メーカーへの発注手数料」や、「出張作業費」などが加算されることもあります。特に、セキュリティレベルが非常に高い、特殊なカードキーの場合、管理会社では対応できず、錠前メーカーに直接、個別発注する必要があるため、費用はさらに高額になる傾向があります。このように、カードキーの再発行費用とは、単なる「モノの値段」ではなく、高度なセキュリティシステムをリセットし、あなたの安全を再構築するための、「サービスと技術の値段」なのです。その価値を正しく理解することが、納得のいく支払いに繋がります。
なぜカードキーの紛失はこれほど高くつくのか?再発行費用の内訳