先週の午後のことです。隣に住む一人暮らしの高齢の女性が、玄関の前で困り果てた様子で立っているのを見かけました。声をかけると、鍵は刺さるのにどうしても回らないとのことでした。彼女は小さな力でなんとか回そうとしていましたが、シリンダーはびくともしません。私は彼女の代わりに鍵を預かり、状況を確認することにしました。確かに、奥までしっかりと差し込まれている感触はあるものの、左右に回そうとすると硬い壁に当たったような手応えがあります。無理に力を込めれば鍵が曲がってしまいそうな、嫌な予感がしました。まず私が確認したのは、彼女が持っている鍵そのものの状態です。よく見ると、鍵の溝に黒い埃のようなものが固着しており、全体的にくすんでいました。私は一度鍵を返し、自宅から柔らかい布と古い歯ブラシ、そして鍵専用のパウダー状の潤滑剤を持ってきました。まずは歯ブラシで鍵の溝を丁寧に掃除し、布で汚れを拭き取りました。これだけでも金属の輝きが戻り、引っかかりの原因が少し取り除かれたように見えました。次に、シリンダーの中に専用の潤滑剤を軽く吹き込みました。これは油分を含まない粉末タイプのもので、内部の滑りを劇的に改善してくれるものです。準備を整え、再び鍵を差し込んでみました。最初はまだ重い感触がありましたが、何度かゆっくりと抜き差しを繰り返すうちに、内部のピンに潤滑剤が馴染んできたのか、手応えが軽くなっていくのが分かりました。そして、少しだけドアを手前に引き寄せながら回すと、カチリと軽やかな音を立てて鍵が回ったのです。女性の顔にパッと明るい笑顔が広がり、何度も感謝の言葉をいただきました。どうやら、玄関ドアのゴムパッキンが経年劣化で硬くなり、ドアを外側に押し出す力が強くなっていたことも、鍵が回らなくなった一因だったようです。今回の件で、私は鍵という道具がいかにデリケートなものであるかを再確認しました。彼女にとっては毎日の当たり前の動作ができなくなることが、どれほど大きな不安だったことでしょう。私は彼女に、もしまた回りにくくなったら鉛筆の芯を鍵に塗るのも効果的だと教えました。鍵が回らないというトラブルは、適切な道具と少しのコツさえあれば、専門業者を呼ぶ前に解決できる場合が多いのです。