スピード重視の鍵トラブル解決法

車のトランクが開かない、キーをインロックしてしまった。そんな絶望的な状況で、JAFの会員でもなく、すぐに頼れる鍵屋のあてもない時、多くの人が「高額な出費を覚悟しなければ…」と、頭を抱えてしまいます。しかし、その前に、ぜひ一度、確認してみてほしいのが、ご自身が加入している「自動車保険（任意保険）」の契約内容です。実は、多くの自動車保険には、こうした鍵のトラブルに対応してくれる「ロードサービス」が、無料で付帯している場合があるのです。この事実は、意外と知られておらず、知っていれば無駄な出費をせずに済んだ、というケースも少なくありません。保険会社が提供するロードサービスの内容は、各社によって異なりますが、その多くは、バッテリー上がりやタイヤのパンクといった基本的なトラブル対応に加えて、「キーの閉じ込み（インロック）時の開錠サービス」を、無料サービスの範囲内に含んでいます。つまり、あなたが保険に加入しているだけで、専門の提携業者が現場まで駆けつけ、無料でドアやトランクの鍵を開けてくれる可能性があるのです。これは、数万円かかることもある鍵屋への依頼費用を考えれば、非常に大きなメリットと言えるでしょう。ただし、このサービスには、いくつかの注意点と限界があります。まず、無料となるのは、あくまで「開錠作業」のみであることがほとんどです。もし、鍵の紛失により、新しいキーの作成や、イモビライザーの再設定が必要になった場合、その費用は自己負担となります。また、年間の利用回数に制限が設けられている場合や、一部の特殊な鍵（セキュリティレベルが極めて高いものなど）は、サービスの対象外となることもあります。さらに、保険を使うことで、翌年の保険等級に影響があるのではないか、と心配する方もいるかもしれませんが、ロードサービスのみの利用であれば、等級が下がることはありません。トランクが開かないというトラブルに見舞われたら、まずは慌てて鍵屋に電話する前に、保険証券や、保険会社のアプリ、あるいはグローブボックスに入っているはずの連絡先カードを確認し、自分の保険にロードサービスが付帯しているか、そして、そのサービス内容はどうなっているかを、一度問い合わせてみてください。その一本の電話が、あなたを予期せぬ大きな出費から救ってくれるかもしれません。

道端や、駅のホーム、あるいは商業施設で、一枚のカードキーを拾った。それは、どこかのマンションの、誰かの家の鍵かもしれない。そんな時、あなたならどうしますか。良心に従い、持ち主の元へ返してあげたいと思うのが、人情でしょう。しかし、その「返し方」を間違えると、かえってトラブルを招いたり、拾ったカードキーが悪用される隙を与えてしまったりする可能性があるのです。カードキーを拾った時に、最も安全で、そして正しい行動。それは、「最寄りの警察署、または交番に、遺失物として届け出る」ことです。これが、唯一にして絶対の正解です。なぜなら、警察は、落とし物を持ち主の元へ返すための、最も公的で、信頼性の高いシステムを持っているからです。遺失物として届けられたカードキーは、その特徴がデータベースに登録されます。一方、カードキーを失くした持ち主が、警察に遺失届を出していれば、その情報と照合され、持ち主に連絡がいくことになります。自分で持ち主を探そうとする行為は、避けるべきです。例えば、カードキーに、マンション名や管理会社の名前が記載されていたとしても、直接そこへ届けに行くのは、必ずしも最善策とは言えません。あなたが届けた相手が、本当にそのカードキーの正規の管理者であるという保証はありませんし、対応の過程で、あなたの個人情報が、不必要に知られてしまう可能性もあります。また、絶対にやってはいけないのが、SNSなどで「〇〇マンションのカードキーを拾いました！お心当たりの方はご連絡ください」と、不特定多数に向けて発信する行為です。これは、持ち主以外の、悪意を持った第三者に、「このマンションの、セキュリティを突破できるカードが、今ここにある」と、公に宣伝しているようなものです。非常に危険な行為であり、新たな犯罪を誘発する引き金になりかねません。カードキーは、現金や財布と同じ、非常に重要な価値を持つものです。それを拾ったあなたの責任は、その価値を安全に、そして確実に、公的な機関へと引き渡すこと。その誠実な行動が、どこかで困っている持ち主を救い、そして、社会全体の安全を守ることに繋がるのです。

鍵が回らない。この緊急事態において、焦りからくる間違った行動は、問題を解決するどころか、あなたをさらに深いトラブルの淵へと突き落とします。良かれと思ってやったその行為が、実は、鍵とシリンダーに致命的なダメージを与え、数千円で済んだはずの修理を、数万円の交換費用へと跳ね上がらせてしまうのです。ここでは、鍵が回らない時に、絶対にやってはいけない「NG行動」を、いくつかご紹介します。まず、最も多くの人がやりがちで、そして最も危険なのが、「CRC-556などの、油性の潤滑スプレーを鍵穴に注入する」ことです。動きが悪いものには、とりあえず潤滑油、という発想は、他の機械であれば正しいかもしれません。しかし、精密機械である鍵穴において、これは最悪の選択です。油性の潤滑剤は、その粘性によって、鍵穴内部のホコリや金属粉を吸着し、まるで粘土のように練り固めてしまいます。一時的に滑りが良くなったように感じられても、時間が経つと、その固まった汚れが、内部の部品にこびりつき、症状を以前よりもはるかに悪化させてしまうのです。鍵穴に使えるのは、必ず「鍵穴専用」と書かれた、速乾性のパウダースプレーだけです。次にやってはいけないのが、「針金や、つまようじなどで、鍵穴の内部をいじる」ことです。鍵穴の内部構造を理解していない素人が、闇雲に内部を掻き回せば、繊細なピンやスプリングを曲げたり、傷つけたりするだけです。また、針金などが中で折れてしまえば、もはやプロの鍵師でも手の施しようがなくなり、シリンダーを破壊する以外の選択肢はなくなります。そして、もちろん、「力任せに、鍵をぐりぐりと回そうとする」のも、絶対に避けるべきです。その過剰な力が、鍵の最も弱い部分に集中し、鍵が根元から「パキッ」と折れてしまう、という最悪のシナリオを招きます。鍵が鍵穴の中で折れてしまえば、もはやスペアキーも役に立ちません。これらのNG行動は、全て、「問題をこじらせる」という点で共通しています。鍵が回らないという異常は、いわば鍵からの「SOS」です。その声に耳を傾け、力でねじ伏せるのではなく、正しい知識で、優しく対処してあげることが、何よりも大切なのです。