カードキーと一括りに言っても、その内部で情報を記録している方式によって、大きく二つの種類に分けられます。黒い帯状の磁気ストライプを持つ「磁気カードキー」と、内部にICチップを内蔵した「ICカードキー(非接触キー)」です。この二つは、利便性だけでなく、紛失してしまった際の「セキュリティリスク」においても、実は大きな違いが存在します。まず、「磁気カードキー」ですが、これは、キャッシュカードやクレジットカードと同じように、磁気ストライプに記録された情報を、リーダーにスライドさせて読み取らせる仕組みです。比較的、古いタイプのホテルやマンションで採用されていることがあります。この磁気カードキーの最大の弱点は、「情報の複製(スキミング)が、比較的容易である」という点にあります。特殊な装置を使えば、磁気ストライプの情報を読み取り、別の空のカードにコピーすることが、技術的には可能です。もし、あなたが紛失した磁気カードキーが、悪意のある人物の手に渡り、その情報が複製されてしまった場合、たとえあなたが管理会社に連絡して、元のカードを無効化してもらったとしても、その複製されたカードは、システム上では別のカードとして認識され、使えてしまう、という危険性もゼロではありません。次に、現代の主流である「ICカードキー」です。これは、内部のICチップに記録された情報を、リーダーにかざすだけで、無線通信(RFID)によって読み取ります。このICチップの情報は、多くの場合、高度に暗号化されています。特に、FeliCaなどの高性能なICチップでは、リーダーとカードがお互いを認証し合う「相互認証」というプロセスを経てからでなければ、データのやり取りが行われない仕組みになっています。この暗号を解読し、情報を不正にコピー(クローニング)することは、極めて困難です。そのため、ICカードキーは、磁気カードキーに比べて、複製されるリスクが格段に低い、と言えます。紛失した際に、管理会社に連絡して、そのカードのIDをシステムから削除すれば、ほぼ確実に、そのカードは無力化できます。このように、二つのカードキーは、その技術的な背景によって、紛失時に内在するリスクの大きさが異なります。ご自身の持つカードキーがどちらのタイプかを知っておくことは、セキュリティ意識を高める上で、非常に重要です。
磁気カードキーとICカードキー、紛失時のリスクの違い