住まいの防犯対策を考えた時、様々な選択肢があります。防犯カメラの設置、窓への補助錠の追加、センサーライトの導入。しかし、それら全てに先んじて、まず見直すべき、最も基本的で、そして最も効果的な対策が、玄関の「シリンダー錠の交換」です。なぜなら、玄関は、侵入犯が最も狙いを定める場所の一つであり、その玄関の守りの強さは、シリンダー錠の性能に、ほぼ全てがかかっているからです。もし、あなたのお住まいのシリンダー錠が、10年以上交換されていない古いものであれば、その防犯性能は、もはや現代の侵入犯の手口には通用しない、丸腰に近い状態であると認識すべきです。特に、旧式のディスクシリンダーやピンシリンダーは、プロの手にかかれば、わずか数分でピッキングされてしまいます。シリンダー錠を、最新の防犯性の高いものに交換することは、単なる部品の取り替えではありません。それは、家のセキュリティレベルを、根本から、そして劇的に引き上げる、最も賢明な投資なのです。では、どのようなシリンダーに交換すべきなのでしょうか。現在の最適解は、間違いなく「ディンプルシリンダー」です。その複雑な内部構造は、ピッキングに対して圧倒的な強さを誇ります。また、ドリルなどによる物理的な破壊行為に対しても、内部に超硬金属のガードプレートを埋め込むなど、高い耐性を持つ製品が数多く存在します。さらに、セキュリティを万全にするなら、「メーカーによる登録制」を採用したシリンダーを選ぶことを強くお勧めします。これは、購入時に所有者情報を登録し、その所有者でなければ、メーカーですら合鍵の複製ができないというシステムです。これにより、知らない間に、不動産業者や、以前の住人、あるいは鍵を預けた知人などに、勝手に合鍵を作られてしまうというリスクを、完全に排除することができます。シリンダー錠の交換は、決して安い出費ではありません。しかし、万が一、空き巣被害に遭った場合の、金銭的な損失と、何より家族が被る精神的なダメージを考えれば、その費用は、未来の安心と平穏を手に入れるための、極めて価値のある保険料と言えるでしょう。