スマートキーが主流となった現代でも、街には、まだまだ物理的な鍵と、室内のレバーでトランクを開けるタイプの車が数多く走っています。これらの、いわばアナログな仕組みを持つ車では、スマートキー搭載車とは全く異なる原因で、トランクが開かなくなるトラブルが発生します。その代表格が、「鍵穴(キーシリンダー)のトラブル」と、「オープナーワイヤーのトラブル」です。まず、トランクに付いている鍵穴に、直接キーを差し込んで回すタイプの車で多いのが、キーシリンダー自体の劣化や故障です。トランクの鍵穴は、雨風や砂埃に常にさらされる、非常に過酷な環境にあります。長年の使用で、内部にゴミが詰まったり、金属部品が錆び付いたりして、キーが回らなくなったり、差し込めなくなったりするのです。この場合の応急処置としては、鍵穴専用の潤滑スプレーを少量吹き付け、キーを何度か抜き差しして、内部の動きをスムーズにしてみる方法があります。ただし、内部の部品が完全に固着・破損している場合は、鍵屋に修理や交換を依頼する必要があります。次に、運転席の横にある、トランクオープナーのレバーを引いて開けるタイプの車で頻発するのが、そのレバーと、トランクのロック機構を繋いでいる「ワイヤー」に関するトラブルです。長年の使用で、このワイヤーが伸びてしまい、レバーを引いても、ロックを解除するのに必要な距離だけ、ワイヤーが引けなくなってしまうことがあります。この「ワイヤーの伸び」が原因の場合、レバーを最大まで引きながら、誰かにトランクを外から持ち上げてもらうと、開くことがあります。さらに深刻なのが、「ワイヤーの断線」です。金属疲労などで、ワイヤーが完全に切れてしまった場合、もはやレバーを引いても、全く手応えがなくなり、トランクを開けることはできなくなります。この場合は、後部座席からトランクスルー機能などを使って内部にアクセスし、ロック機構を直接操作するか、あるいは、専門の業者に依頼して、ナンバープレートの裏などから、特殊な方法でワイヤーを操作してもらうしかありません。アナログな仕組みには、アナログなりの、特有の故障原因があるのです。
古い車に多い、トランクの鍵穴とワイヤーのトラブル