玄関の電子錠がもたらすスマートな暮らし。それに憧れつつも、「取り付け工事が大掛かりで、費用も高そう」と、二の足を踏んでいる方も多いのではないでしょうか。しかし、近年、DIYの人気と技術の進化に伴い、専門業者に依頼しなくても、自分で取り付けが可能な「後付け型」の電子錠が、数多く登場しています。DIYであれば、高額な設置工賃を節約でき、自分の手で家のセキュリティを高めるという、大きな達成感も得られます。しかし、玄関という、住まいの安全の最重要拠点を扱う以上、そのDIYには、正しい知識と、いくつかの重要な注意点が伴います。まず、DIYで取り付け可能な電子錠として、最も一般的なのが「既存の錠前(サムターン)に被せて取り付けるタイプ」です。これは、室内側のドアに、両面テープで本体を貼り付け、ドアの鍵のつまみ(サムターン)を、電子錠のモーターで物理的に回転させるという仕組みです。ドアの外側には、暗証番号を入力するためのキーパッドなどを、同じく両面テープで貼り付けます。このタイプの最大のメリットは、ドアに一切の穴あけ加工をする必要がないため、賃貸住宅でも、原状回復を前提に設置が可能である点です。ただし、両面テープの接着力は、ドアの材質や表面の状態に大きく左右されるため、十分な強度が得られるかを、事前に確認する必要があります。もう一つが、「既存のシリンダーを交換するタイプ」です。これは、現在付いている鍵穴(シリンダー)部分を取り外し、そこに、カードリーダーやキーパッドが一体化した、電子錠のシリンダーをはめ込む方法です。これも、既存の穴を利用するため、基本的には追加の穴あけは不要です。しかし、ドアの厚みや、錠前の型番などが、製品と完全に適合していなければ、取り付けることはできません。購入前の、極めて正確な採寸が、成功の絶対条件となります。いずれのタイプを選ぶにせよ、取り付けの不備は、電子錠が正常に作動しないだけでなく、防犯性能の低下にも直結します。取扱説明書を熟読し、少しでも作業に不安を感じるのであれば、無理をせず、プロの設置業者に依頼するという、賢明な判断も忘れてはいけません。